男子保育士の話し

男性保育士のこれから

近年、職業についての男女間格差、偏見は止めましょうという声を多く聞くようになった。

その言葉のとおり、トラックドライバー、自衛官、警備員、タクシー運転手、工事現場の作業員などの中に女性の姿を頻繁に見かけるようになった。

そして今後は女性の経営者や女性の議員などもますます増えていく事が予想される。まだまだ発展途上の部分も否めないが女性の社会進出は確実に進んでいると言っても過言ではないだろう。

一方でこれまで女性の職業というイメージがある職場に男性が進出するというケースはどうだろうか。

思い浮かぶ職業としては、看護士、介護員、そして保育士といったところではないだろうか。

女性の社会進出という流れは概ねポジティブに捉えられる事が多いように思われるが、男性に対する職業の偏見はまだまだネガティブに捉えられる傾向は否めないと云わざる得ないというところではないだろうか。

そんな背景を踏まえて今回は男性の保育士について焦点を当てて考えてみたい。

[職場環境について]
保育士は当然の事ながら女性が圧倒的に多いのが事実。園児のお世話以前に男性保育士がまず乗り越えなければならないのは他の女性保育士との人間関係ではないだろうか。

冒頭で列挙した男性中心の職場で活躍している女性の存在は理解が進みつつある。だがその逆のケースはどうであろうか。一般的には社会的弱者は女性というイメージが強く根付いているものの、状況的には逆になるケースもあるという事を私たちは理解すべきである。

[保護者の偏見]
残念な話だが、希に男性保育士が園児に対して性加害の事件を起こしたなどのニュースが報じられる事がある。

これはごく一部の心ない者が引き起こした事件であり、大多数の男性保育士については誠実に園児と向き合って仕事をこなしているわけであるが、保護者の立場からすれば偏見とはいえ、男性の保育士に我が子を預けても本当に大丈夫だろうかという不安がつきまとうという気持ちも理解はできる。

ここは働く立場に身を置く男性保育士も、子どもを園に預ける保護者にしてもお互いに安心する事ができる対策が必要だ。

先日、保育士の職業に就く男性に対して性犯罪歴を確認する事が可能となる法制定について議論が進んでいるというニュースが報じられていた。その案件について障壁となっているのは、調べられる側の男性の人権の問題が大きい様だ。

人権は大切だが、ここは割りきった対応が必要なところだ。リスクの可能性は摘み取って、真摯に働く意欲のある男性保育士の環境を整える事と、保護者の男性保育士に対する安心感を少しでも得られる対応を求めたい。

[待遇面の不安をどうするか]
保育士として働く意欲に溢れていたとしてもやっぱり気になるのは収入面であろう。

男性であれば、一家の大黒柱の役割を担っている立場の方がかなりの割合であると考えられるが、現在の保育士の収入については少々心もとないというのが実情ではないだろうか。

この職業に限らず、物価上昇に伴う賃上げというものが叫ばれている昨今だが、これについてはそう簡単には実現できない問題が山積みである。

そこで提案したいのが、副業としてスポット的に保育の仕事ができないだろうかというところだ。

普段の本業勤務の傍ら、勤務場所や勤務時間のマッチングを行い、条件が一致する保育園で働く事ができるシステムだ。保育士は当然ながら主婦業と両立で働いている方が多いわけで、その方々が自身の子供の面倒を見なければならない時間帯などにスポット的に副業の男性保育士を割り当てるというサイクルを作るのである。

このような形で好きな仕事をしながらも生活はしっかりと維持していく。尚且つ保育園の人手不足の解消にも繋がるWin-Winの関係を目指した提案である。

課題は先に触れた犯罪歴の確認など働く人の身分証明を明確にするなど乗り越えなければならない事がいくつか挙げられると考えられるが、是非とも検討する余地はあるのではなかろうかと考える。

[最後に]
今回は男性保育士という職業を通して、職業の男女間の格差や偏見というものについて考察してみた。

その現在地はどのような状態なのかというと、女性の社会進出に対する認知度は確実に向上しつつある一方で、逆バターンとなる女性中心の分野に男性が進出していくという多様化の実現にはまだまだ乗り越えるべき課題が多くあるという事が浮き彫りになったのではないかというところではないだろうか。