増えているアレルギー
現代は数十年前に比べると、アレルギーを持った子供の割合が増えています。
アレルギーとは、体に入った異物から体を守る「免疫」が過剰反応して体に症状を引き起こすことをいいます。
何故アレルギーが起こるのか、その理由は様々で、食生活の変化、環境汚染、ストレス、そして過度な衛生的環境などもアレルギーの原因になると言われています。
子どもの主なアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)は、卵、乳製品、小麦などが多いですが、肉や魚類、蕎麦やナッツ類など他にも数多くあり、特に乳幼児は年齢によっても変化がみられる傾向にあります。
保育園ではそのようなアレルギーを持つ乳幼児のためのマニュアルがあります。
しかし、子どもはいつどんなことが起こるか分かりません。
マニュアル通りにこなしていても、ある時予想もしない出来事が起き、それが大事故につながることもあります。
保育士はそのことも十分理解し、常に子供たちに目を光らせておくことが重要です。
予想外な出来事で……
あるクリスマスの日に起きた事例は、一つのシュークリームから始まりました。
その日クリスマス会を保育園で開催することになり、遊戯の後のおやつにシュークリームが出されることになりました。
シュークリームには卵、小麦、牛乳など多くのアレルゲンが入っているので、対象のアレルギーを持った子は別のおやつに差し替えられ、他の子たちから少し離れたテーブルで保育士が付き添って与えられていました。
ところが、おやつの時間も終わってしばらくした後に、牛乳アレルギーを持った一人の男の子が急に嘔吐し、口周りに赤い発疹ができ、息も荒く徐々に唇も真っ青になっていきました。
典型的なアナフィラキシー症状だったため、すぐに救急車で運ばれました。
そして後から分かったのが、そのアナフィラキシー症状の原因は乳製品を口にしたためでした。
差し替えられたおやつには、牛乳などの乳製品は含まれていませんでした。
ではどこで乳製品を口にしたのでしょう?
保育士たちが原因究明していると、意外なところから出てきました。
症状を起こした男の子の使うロッカーの近くから、食べかけのシュークリームが出てきたのです。
他の園児たちに聞くと、ある男の子がシュークリームが苦手で、保育士に隠れてこっそりシュークリームを隠していたそう。
そしてシュークリームを隠していたのを見たアレルギー持ちの男の子が、興味本位で口にしてしまったようでした。
アレルギーのない子たちを見ていた保育士はいましたが、数の多い園児たちを一度に全員見るのは無理に等しいです。
まして、シュークリームが苦手な子がいてそれを隠してしまう……なんてことは予想することはかなり難しいと思います。
アレルギーの出た男の子にとって、なぜ自分は皆と違うおやつなんだろう?みんなと一緒のシュークリームを食べられないんだろう?と感じるのは当然のことです。
このような件があり、この保育園ではアレルギーの有無に関わらず、アレルゲンの含まれていないおやつが用意されることになりました。
珍しいアレルギー
もう一つの事例は、かなり特殊なものです。
5歳になるその女の子は、今までアレルギーの報告はありませんでした。
ある時その女の子は風邪をひいてしまい、数日休むことになりました。
その保育園では体温が37度台ならば様子を見て登園させられることになっており、ぎりぎり体温が下がった頃に保護者に連れられて登園しました。
まだ顔も赤く本人はぼーっとした様子でしたが、保護者の要望でやむを得ず預かることになりました。
まだ熱もあったので他の園児たちとは別の部屋で様子を見ることになりましたが、女の子はずっとグッタリしたまま。
そしてそのまま具合が悪くなっていき、昼前には熱もまた上がり始めてしまいました。
保護者へ迎えに来てもらうよう連絡し、何か問題が起きないよう女の子を見ていると、咳が悪化していき喉をかゆがるようなしぐさを繰り返すようになりました。
アレルギー反応のようでしたが、風邪もひいているということで下手な判断はせず、保護者が迎えに来られた際にそのまま病院へ行くよう伝えました。
そして後日分かったこと。それは、女の子が登園前に飲んだ市販の風邪薬でアレルギーを起こしていたことです。
忙しい両親は女の子を病院に連れて行けず、市販のカプセル錠を飲ませたそうです。
カプセルには豚由来のゼラチンが含まれており、女の子はゼラチンアレルギーを起こしていました。
ゼラチンアレルギーは非常に稀ですが子どもでも発症する場合もあり、症状はすぐには出ず摂取から2、3時間たってから出ることが多いため、初めて摂取する時は特に注意が必要です。
保護者も忙しいかもしれませんが、子どもの体調変化を甘く見ず、何かあったら病院へ連れていくことが望ましいです。
どこに潜むか分からない危険
アレルギーはすぐに症状の出るものと、時間をあけて出るものがあります。
どちらにしても、一歩間違えれば子どもの命に係わる重大なことです。
周りの大人はちゃんと目を光らせて、子どもがアレルギー事故にあわないよう、環境改善や意識付けを徹底する必要があります。
kitsuneko22著