世の中には様々な職業がありますが、皆様はどのような職業に就かれておりますか?
因みに、私は保育士として仕事に携わっており、かれこれ4年が経過しようとしております。
職業によってそれぞれ大変な面は違いますが、保育士で言えば、やはり気疲れすることでしょうか。保育園で私達が相手にするのは「モノ」ではなく「ヒト」であり、さらに毎回違う子供を担当することになるので、日々対応が変わってくるのです。
しかしとある出来事をきっかけに仕事に対する考えを改めることになりました。
今回は、保育園に勤めている私が出会ったある母親に関してお話をさせていただきたいと存じます。
保育士として
先ずは、簡単な自己紹介からまいりましょう。
私には保育士として働いていた母親がおり、小学生になるまでは母が所属していた保育園に入園しておりました。そのせいか、母の柔らかい言葉やコミュニケーション、トラブルが起きても崩れない寛大な姿勢に私自身も魅力を感じたのか、幼い頃から母親にようになりたいと、そう思って学生時代を送りました。
小学校、中学校、大学まで来てもその気持ちは変わらず、私は大学を卒業してから指定保育士養成施設に入学し、卒業してからは保育士として仕事に従事するようになったのでした。
因みに私が所属している保育園は、「認可外保育園」です。
国の基準によって人員や施設の場所、設備が定められている「認可保育園」は、標準の保育時間が11時間から8時間となっておりますが、私の「認可外保育園」は、24時間預けることが出来る施設となっております。
調べてみると、24時間預かってくれる認可保育園もあるみたいですが、給食のある無し、いつから入園できるか、何時まで預かり可能かどうかは、施設によってかなり異なります。
因みに私の保育園は、給食は自園で作っており、月始めから入園することが可能な施設です。
当施設には、様々な事情を抱えたご家庭がお子様を預けに来るのですが、その中で私がとても印象に残っているお母さまがいらっしゃいました。
保育士という仕事は、冒頭でもお伝えした通り本当に気疲れするお仕事なのですが、それでも続けてこられた理由には今回のお母さまがとても関わっており、今でも忘れられない思い出となっております。
障害を持った母親
とあるご家庭の母親が私の所属する保育園にお子様を預けることになりました。
子供は女の子で、お喋りが大好きな活発なお子様でした。
その時私は、お子様の方より母親の方が気になりました。
母親のお話を聞くところによると、生まれてから片目が見えなく、これまでも片目のみ人生を歩まれてきたようです。
「もう慣れましたので、全然気にしておりません。でも子供を連れている時に活発な子なので急に走り出したりすると、見失う可能性があるのでそれが怖いですね」
その母親は、自身の不幸を物ともしていないようで、元気に笑顔でお話しして下さいました。
それから、その母親のお子様を預かるようになって2か月程経ちました。
毎回子供を迎えに来るのは旦那様の方ではなく母親の方で、片目が見えない為に自転車や車は運転出来ず、背中に背負って毎回ご自宅に帰っていくのです。
私は毎回その姿に心配を覚えておりましたが、いつも迎えに来る母親の顔は笑顔で、喋り方も元気溌剌としており、深くは事情に入ることはしませんでした。
しかしある時、その母親が体調悪そうに保育園に預けに来た時があったのです。
そしてその出来事が私にとってとても印象に残る日となったのでした。
母は強し
幸い、お子様の方は元気でしたが、母親の方はいつもの元気が無く、とても疲れて様子が伺えたのです。
私は、心配になってついこんなことを言ってしまったのです。
「失礼ですが、旦那様に来てもらうことは出来なかったのでしょうか?」
私はその事をつい口に出してしまい、とても後悔をしまいました。
ご家庭には、本当に色々な事情があり、命の危険が無い限りはご本人様のご意思を疑うような質問をあまりよくありません。
気持ちの中で心配と後悔がごちゃまぜになっている私でしたが、
そんな私を目の前にして母親の顔が一気に笑顔に戻り、こう言い放ったのでした、
「私は、この子の母ですから問題ありません」
私は、この言葉を笑顔で言われた時に、沢山の気持ちが沸き上がりました。しかし、後から考えれば一番この時に思ったことは、多分こうだと思います。
(強いなぁ…)
私自身、保育士の仕事をしていて多くの子供の面倒を看てきましたが、思い通りにならないことが多く、それでも責任放棄も絶対に出来ない仕事なので、自身の不満を押し殺して業務に当たることが多くございました。
でも思うのです。
片目が見えなくて只でさえ生きづらいのに、保育園に預ける時以外はその状態で子供の面倒を看なくてはいけないのは、本当に大変な事ではないかと。
「大変失礼致しました、、でもあまり無理はなさらないで下さいね」
私は、そんな母親の強さに圧倒されながらも、情けないことにこんな返ししか出来ませんでした。母親からしてみれば自身が体調が悪くても、自分が迎えに行かなくてはならないのかもしれませんが、それでも私は心配する気持ちが抑えられませんでした。
「いえいえ、私があまり働けない分、ここは頑張らないといけませんので」
そして私は、母親の最後の言葉にどこか完敗したような気がしました。
勝ち負けの話ではないのですが、それでも私はこう思ったのです。
(この母親の方がよっぽど保育士に向いているな、、、)
私は、ある意味打ちのめされたような気持ちになったのでした。
これからの自分へ
以上ここまで、私が出会ったある母親に関してお話をご紹介させていただきました。
私は、現在も保育士を続けておりますが、業務に疲れた時にはいつもこの母親の出来事を思い出しております。
「責任があるから」、「仕事だから」。
私が仕事を続けるにはこの言葉が付きまといますが、そんな一言でこのお仕事を続けられるような気はしておりません。
「守りたい」
そんな気持ちでしょうか。
私は、改めてこの保育士というお仕事の本質に触れたような気がしたのです。
これからも私は、「守る」というを行為を噛みしめながら仕事に当たっていきたいと
心からそう思っております。
diary.st著